「少年アリス」

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結局のところ私の趣味嗜好の原点なんだと思います。
長野まゆみの少年愛的な世界を知らなければ、私はこういった趣味にならなかったような気もするし、遅かれ早かれ出会う作家ではあっただろうけど意味合いが少し違っていたかもしれません。

ただ私はこのブログで長野まゆみについて触れるのを躊躇するぐらい、長野まゆみと「JUNE(BL)」は似て非なるものだと思っているし、望んでいました。作家の変化と成長を読者である私は受け入れるか読まなくなるかしかないわけですが、長野まゆみはずっと読み続けてしまいそうです。
『少年アリス』の改造版が刊行されたこの機会にちょっと吐き出してみようかなーと思いました。

現在の純粋なファンの方に読まれるのは多少心苦しい点があるのでたたみます。

では私が純粋なファンじゃないのかといえば絶対にそんなことないのです。
だって好きだもん。全部読んでるもん。(もんって)
ただ、ある作品からちょっと違和感を覚えるようになって意識的に自分の中で「―以降の作品」「―以前の作品」と線引きしてしまうようになったんです。その作品は02年に刊行された『猫道楽』でした。決して嫌いなわけではないのです。でも、先生自身が明らかに「BL的なもの」を意識されたのかなと思ってしまいました。設定でいえばそれ以前の「凛一&氷川シリーズ」の方が余程BL的ではあったのですが、それは全然平気だったんですよね。私が記憶する限りでは『猫道楽』で初めて茶髪の携帯電話を持った現代的な男の子が主人公になって、長野まゆみの世界に現実が入ってきた―と思ったのを覚えています。もっと言ってしまえば「似合わない」と感じたんですよね。あとは男性同性愛の表現が直截的になりました。「猫」が「ネコ」を表すもの、とか。
02年といえば先生のデビューは89年だったので13年。その間、本当に多作だったにも関わらず作品に流れる雰囲気を損なうことなく「長野まゆみの世界」として完成したものを送りだしていました。だから『猫道楽』は先生の「変革期」だったのだと思います。そこから『あめふらし』『左近の桜』のような幻想的な同性愛系の作品と、『ユーモレスク』『箪笥のなか』『となりの姉妹』『メルカトル』『カルトローレ』のような文芸的な作品に分かれていったような印象を受けます。

先生自身の言葉で「もう少年愛や理科的、賢治的世界の話を書くつもりはない」と仰っていたのを何かで目にしました。20年作家でいるということは、自分の中の「飽き」や「怠慢」との戦いでもあるのかもしれません。それが今回の『改造版 少年アリス』という試みなのかなと。デビュー作の「アリス」の方は、やはりどう逆立ちしても「児童文学」ではないのだけど、今回の漢字や旧仮名、難解な単語をことごとく易しく直した「新アリス」は紛れもない「児童向けファンタジー小説」に仕上がっていると思います。アリスと蜜蜂の耽美的な雰囲気をこの作品から嗅ぎ取るのは難しいと思うし、「アリス」にはあった夜の学校、理科実験室の背徳的な緊張感は感じられなくなっていました。その分挿絵や装丁が可愛らしくなっていて、欲目なしにそれはそれで良かったんですけどね。多用される旧仮名遣いは宮沢賢治へのオマージュであるとともに、長野まゆみの世界とは切り離せないものだったはず。でも先生自身がそういった「装飾物」への偏り抜きで小説を仕上げたいと願っているのならばファンとしては見守るよりほかないわけです。それにわかっているんですよ。理科的賢治的な世界をどんなに求めたところで、今生み出されるものは昔の模倣でしかなくなるということは。それに、読者である私だって確実に大きく変化しているわけだし。『雨更紗』や『夏至南風』の描写でドキドキしていた少女はもういない・・・。元も子もない結論を出してしまうと「昔の作品の方が好きだったな」となるのですが、そんな身も蓋もない一言で終わらせるぐらいなら読まない方がマシだわ!というファン心理を許してください。

河出書房から出ている「文藝」の特集が2冊あるのですが、つらつら眺めて思うに、長野作品には初期、中期、後期(現在)と分類できる気がします。「少年愛(初期)」と「生殖(中期)」と「後期」とに。初期と中期の分かれ目は『新世界』かな。ファンタジーとして『テレビジョン・シティ』と重ねてしまう部分があるのですが、民族・種族の繁殖の争いというテーマはこれまでなかったので驚きました。実は完全には理解できていないんですよね(笑)一番長くて一番難しい作品だと思います。生殖については『サマー・キャンプ』が特に好き。先生の書く女性って歪んでますよね。でも女性を主人公にした『八月六日上々天気』『ユーモレスク』は別格で好きだな。
うーん、結局のところ読み始めたのが初期の作品の頃だったから、それでハマったから思い入れが異様に強いという感じもしてきました。95年の『新学期』が最初だったんですよね。それでもデビューから7年か・・・。そこからはデビュー作から遡って追いかけていったのです。『新学期』は最初に読んだということもありかなり好き。じゃあ1番は何かしらっていうと断トツで『天体議会』ですね。銅貨と水蓮は永遠の少年です。次は『魚たちの離宮』『雨更紗』その次に『夏至南風』『耳猫風信社』かしら。やはり初期作品の、友情と愛情の狭間で彷徨う少年達の美しさといったらないと思います。そりゃあ同性の友達に抱く嫉妬の感情や淡い恋心のようなものに、まだ自分の腐癖を知らなかった頃の私は大いなる心のざわめきを感じましたよ(笑)

まだまだ書けるのですがいい加減長くなったのでこのへんで。
絶版本が増えて装丁の美しさが記憶だけに留められてしまうのが悲しいです。収集しようにも場所がない・・・。

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