「残酷な神が支配する」(萩尾望都)

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読んでいる間中息が詰まって呼吸がうまくできていない錯覚に陥った。
暴力によって人の心が破壊し尽くされる様をみた。愛と憎しみの混濁に翻弄される人の深淵をみた。それでも再生に向かって歩こうとする人の強さをみた。
私の言葉なんぞでは表現できないような凄まじい漫画だった。

暴力と破壊の前半と、再生と回復の後半と。

性的虐待を受けた子供がその傷を完全に克服することなんて有り得なくて、過去のフラッシュバックと対峙しながらその記憶との闘いに慣れていくしかない。愛は人を救うこともできるけど、愛だけではたぶんだめなのだ。愛は「後ろ盾」であり、あとは自分の力で脱却していくしかないのだ。巡る季節の中で、崖の淵まで追いやられながら共に闘う共犯者がいる幸い。ジェルミとイアンはきっと大丈夫なんだろう。
「残酷な神」とはあまねく神の名であり、同時に子にとっての絶対神、親のことである。その愛と暴力による支配から子供はどう自立していくのか。一個の人間に人間を託すこの世界でジェルミのような子供がどれだけいることか。

萩尾望都は私にとっていつまでも『トーマの心臓』の作家であり、どうしてもその枠を出なかった。その全体的な魅力も、24年組と俗に呼ばれる漫画家たちの洗礼を受けていない私には、いまいちよくわからないというのが正直なところ。それでも紛れもない「天才」と同時代に生きているのは、きっと幸福なんだと思う。風呂に入りながらふと「萩尾望都が日本人である」という当然の事実に気が付き、また衝撃だった。やっぱり凄い。

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萩尾望都拝

「残酷な神」はわたしにとって、それこそ拝みたくなるほど感動した作品です。ジェルミの凍りついた精神(こころ)は二度と溶けないんじゃないかと思うと、こっちの心臓まで痛くなるほどで。涙を流しながら何度読み返したか。なのに今ごろ気付く愚かさ!「残酷な神」は親だったんですね。すっごく納得。腑に落ちるとはこのこと。もう一度読み返してみますわぁ。

きちんと読むことができて本当に良かったと思います。
私、「風木」は最終章が悲しくて悲しくて読み返すことができないのです。でも「残酷な」はこの先何度か読み返す機会がありそう。読むたびにいろんな物事について考える機会を与えてくれそうです。萩尾望都先生、遅ればせながら少しずつ読んでいけたらと思います。
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