「蹴りたい背中」(綿谷りさ)

唐突ですが純粋に一般書の感想です。
言わずと知れた芥川賞最年少受賞作にして127万部のベストセラー。
5年前も私は書店員でしたが、芥川賞受賞作が掲載された「文藝春秋」を普段ならまず手に取らない客層が面白いように買っていた光景を覚えています。
いつか読むんだろうなーと思いながら気がつけば5年(笑)。あまりに取りざたされた為、あらすじを繰り返し見聞きするうちに読む気力がなくなっていたんですね。「そーゆー話なんでしょ。知ってるよ」みたいな。が、そもそも芥川賞はストーリーを楽しむものではないからね。何で今まで読んでいなかったのか反省しました。
今更こんなこと言うのも恥ずかしいのですが、すごく面白かったです。私の敬愛する書評家方が口を揃えて「天才」と言っていたのがわかりました。19歳で、高校生が主人公の青春(?)小説で、ここまで抑制の利いた文章と、距離感を保って主人公たちを描けるなんて。その姿勢はひたすらクールでカッコよくすらあります。

クラスの余り者、というかハツの置かれている状況って「シカト」に限りなく近いと思う。高校生になると表立ってのイジメって激減する代わりに、気に入らない人とは関係しないという処世術を身に付けるよね。ハツは斜に構えて周りにいる人間すべてを下に見ているような子だけど、それは痛いほどの孤独から身を守るなけなしの防御なんだよね。そこにもう一人の余り者、にな川が現れるわけだけど、彼はハツが諦め切れない俗世への未練を完全に断ち切ったようなオタクで、ハツは自分と似ているようで違うにな川にどんどん興味を持っていくんだ。でもにな川の世界はモデルの「オリチャン」のみで構成されていて―。にな川はモデルの顔とロリヌードをコラージュした写真を宝物にしているような男なんだよ。高校生が主人公の仮にもヒロインが惚れる(と言っていいのかしら)相手としてこんな男見たことないよ。しかも見舞いに行ったハツの行動(キス?)をスルーするような男。その人物設定だけ見ても本当に面白い。そして有名な「愛しいよりも、いじめたいよりももっと乱暴な、この気持ち」ね。好きな人が傷つく姿が見たい、傷付けたい=「蹴りたい」という行動に繋がるわけだけど、それって身も蓋もない言い方をすれば性欲なんだよね。好きな子のことを苛めたいって、結局そういうことでしょう。キレイな恋愛ごとを一切無視して成立した、カッコ悪いのに最高にカッコイイ青春小説だと思います。

デビューから3作。他の2作も読んでみようっと。

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