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「窮鼠はチーズの夢を見る」(水城せとな)

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12月ということでランキングの季節ですね(?)

個人的に06年に出版されたこの漫画を超えるBL漫画は未だにない気がします。
好きな作品、好きな作家はたくさんいるけど、「窮鼠」を読んだ時の心臓を鷲掴みにされたあの感覚。「BL」として発表される漫画には決してない緊張感と切なさがあった。水城先生はBL出身だけど現在は少女漫画で活躍されている方で、「窮鼠」が「Judy」に掲載されていたと知ったときは衝撃でした。大袈裟だけど、ひとつの事件だったと思う。
ただ私は水城先生があまり好きではないのです。「窮鼠」の続編として携帯コンテンツに発表された2作品を食い入る様に読んだけど、涙したけど、あの終わり方は辛すぎる・・・。作品は作者のものとはいえ、読者の期待を100%裏切るってどうなんだろうと思ったのですよ。「放課後保健室」もそうだったな。先生の中では違うのかもしれないけど、バッドエンド好きとして有名だそうで。
続編を読んだことで、単純に「好き」と言えなくなってしまった「窮鼠」だけど、それでも本当に素晴らしくてやはり大好きな作品なんです。

優柔不断な性格が災いして不倫という「過ち」を繰り返してきた恭一。ある日彼の前に妻から依頼された浮気調査員として現れたのは、卒業以来会うことのなかった大学の後輩・今ヶ瀬だった。ところが、不倫の事実を妻に伝えないことの代償として今ヶ瀬が突き付けてきた要求は「貴方のカラダと引き換えに」という信じられないもので・・・。

同性愛者とノンケの恋愛が圧倒的にリアルに描かれていて、男が男と寝ることへの抵抗と違和感や、ノンケを一途に想ってしまうゲイのやるせなさが痛いぐらい伝わってきました。恭一のズルさや弱さ、優しさが本当にリアルで、こんな男いそうだなーってずっと思いながら読んでいましたね。来るもの拒まずで決して自分から人を求めようとしない「流され侍」。恭一の優しさって相手に合わせている部分が大きくて、元妻もそんな性格に嫌気がさして出て行ったんですよ。そんな自分の欠点も恭一はよくわかっていて。長所と短所は紙一重といいますか、決定的な欠点ではないのがまたリアルでした(しつこい)。だって、恭一は確かに優しくもあるんだもん。
今ヶ瀬に脅されてキスされてフェラされて押しかけられて、同棲まがいのことを始めて。それでも今ヶ瀬の用意した逃げ場通りに「一時のことだから」と自分に言い聞かせて関係を続ける恭一。そこにもたぶん「同じ男だから―」という心理が働いていると思うんですよ。女の子には優しくしないといけない、でも今ヶ瀬は男だから損なっても大丈夫だろうっていう。そんな中途半端な気持ちを今ヶ瀬の元彼に指摘された恭一は今ヶ瀬に別れを切り出すわけだけど、そのときの今ヶ瀬の告白が、本当に何て言えばいいのかわからないぐらい心に響いて響いて泣きそうでした。人を好きになるって理屈じゃないんだよね。どんなにダメな男で欠点も嫌って程わかっているのに惹かれてどうしようもないことがあるんだよね。二人ともちっとも綺麗じゃなくて、恋ってのは時に人間の弱さ脆さがむき出しになる醜いものなんだなと。その醜さも含めてとてもとても愛しいものなんだという、原点に立ち返った気持ちでした。
クライマックスのタクシーでの会話とキスはもう言葉を失うぐらいの緊迫感と切実さですよ。こちらにまで空気が伝染して震えがくるぐらい。
恭一の衝動は確かに恋だったと思うの。でも同性愛者とノンケの壁は高くて、そこにはBLが介在することを許さない現実がある。「窮鼠」だけで終わっても良かったと思う。が、「まだ完結ではない」というところに希望を託して続編を読むのもありかもしれない。本当に一読の価値ありのすごい漫画です。

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