「サミア」(須和雪里)

samia.jpg

これはすごい!
一読して言葉を失いました。
なんちゅう面白さだ。
10年前に発売された小説の新装版です。短編が3作収録されています。

私は滅多なことでは本を読んで泣いたりしないです。「泣きそうなぐらい」というのはよくあるけど、そもそも「泣ける」からいい本だという風潮が腹立たしい(巷に溢れるやたらと人が死ぬ小説とか。人が死んだら哀しいのは当たり前じゃない)。こんな前置きを言うからには、はい、本気で泣いてしまいました。
表題の「サミア」は高校生×エイリアンというとんでもない設定なのに、とても切なくて不思議な読後感でした。もう一度言います。高校生×エイリアンですよ?しかも普段は人間の金髪美青年なのに、実物は本当にエイリアンの姿形(描写が気持ち悪い~)をしているんですよ。今だったら商業誌的には有り得ないよね。激しいシーンも男性器の描写もなくて、あるのは控えめな「声」だけ。ああ、これが「JUNE」なんだ。恋やらときめきやらを通り越して宇宙論のような壮大な「愛」に静かに一足飛びしてしまう感じ。萌えとは違うんだけど、好きだなぁ。

しかし泣かされたのは同時収録の「いつか地球が海になる日」でした。
短編なのにこの濃さは何事だろう。
内省的で暗くてトラウマ物で―それを「俺は変態である」というユーモラスな一人称で包む意外性。男の苦痛に歪む顔によってしか性的興奮を得ることが出来ない主人公。そんな彼はあるクラスメートと親しくなったことから彼一人を傷つけてみたいという欲求を抑えきれなくなる。女友達のアドバイスを元に家へ押し掛けてクラスメートを押し倒そうとした所、実はゲイだったクラスメートに逆にヤられてしまうことに。ああ、あらすじを説明しても面白さはちっとも伝わらないよー。
彼が男の苦痛=涙に執着するのには理由があって、それは彼が小学生の頃に書いた文集でわかるんだけど、とにかく読んで欲しい。

「ミルク」は「いつか地球が」からは一転して笑撃作!事故に合い目が覚めるとなぜか嫌っていたクラスメートの飼っているハムスターになっていた主人公!これは面白い。普通に声を出して笑ってしまいましたもん。一番先が読める話だけど、ミルクこと俺の懊悩っぷりが間抜けで可愛くてもう大好きだ。しかも掲載時のタイトルが「やばいでCHU!」って!!(笑)

この著者を知ったきっかけは他ブログ様のレビューだったのですが、現在入手可能な本はほぼゼロ。だから「サミア」が新装版になって本当に嬉しかった。最近良作の「JUNE」が復刊する流れがあるらしい。私にとってのJUNEって、かの有名な「小説JUNE」ではないんだよね。名前だけが残ってエロコミックに移行した後の雑誌しか知らないの。それがとても残念だったので、復刊が増えてJUNE小説がもっと読めるようになるといいな。
ところで私はよく「JUNE的」というふうに作品を表するので、自分の中ではBLとJUNEの曖昧な区分けが存在するけど、一般的にはどんな境界線が引かれているのだろう。気になるところだ。

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Re: 初めまして

Mさまへ

はじめまして、ご訪問&コメントありがとうございます。
同じ本を読んでいる方のレビューは面白いですよね。
私なんぞ、ほぼホモ視線な感想でお恥ずかしい限りです(笑)
今年は高村薫&柴田よしきという一般文芸の当たり年でした。
ぜひぜひ高村薫読んでください!有名な理由がよくわかります!面白いもの!
「サミア」は本当に衝撃でした。
これがJUNEなのね!?と感動を叫びたいぐらい(笑)
これから小説JUNE時代の作品を発掘したいと思います。手はじめに『野菜畑で会うならば』を探しているのですが、なかなか見つからない・・・。復刊されるとよいなぁ。
JUNEは「トラウマの物語」としての一面が色濃い印象です。味付けなどではない、根底にある内省的な暗さが魅力です。青春期に読んでおきたかった・・・。
それでは、今後ともよろしくお願いします!

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Author:yori
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