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「黄金を抱いて翔べ」

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銀行本店の地下深く眠る6トンの金塊を奪取せよ。大阪の街でしたたかに生きる6人の男たちが企んだ、大胆不敵な金塊強奪計画。ハイテクを駆使した鉄壁の防御システムは、果して突破可能か?変電所が炎に包まれ、制御室は爆破され、世紀の奪取作戦の火蓋が切って落とされた。圧倒的な迫力と正確無比なディテイルで絶賛を浴びた著者のデビュー作。日本推理サスペンス大賞受賞。

高村薫先生のデビュー作です。
最初に一言、ものすっごく面白かった。
ネタばれあります。

同人誌きっかけというのが恥ずかしいですが、羽海野さんの「青いカラス」に少しだけ入っていた「黄金」が気になり、早速読んでみました。そしたら・・・これ、すごく好きです。「合田3部作」や「李歐」に比べてあまり知名度がない気がするのですが(そんなことはないのかな?)、ストーリーも登場人物の魅力も引けを取らないと思います。主人公であり当事者の幸田の視点でほぼ全編が語られるため読みやすかったです。同人誌を読む前は、老獪な男達(50代)のピカレスクロマンなのかなーと思っていたのですが、主人公達は29歳でした。それにしても、幸田にせよ北川、野田にせよ「何故」という動機の部分が語られないのが最初は不可思議でした。動機付けをしたくなるのは、エンターテイメントというには硬質すぎる高村先生の文章に惑わされるせいかもしれません。でも「黄金」は何というか、しなやかに筋の通った一級の犯罪小説なんですよね。そこにはバックグラウンドなんて味付け程度で十分なんでした。
金塊を盗む。ただそこにあるから盗む。そうやって生きてきたから盗む。
個々の事情も社会的主張もすっ飛ばして「盗む」。
その痛快さに眩暈のような高揚感を覚えました。

6人のメンバー紹介を。主人公の幸田は学生時代からアングラ系の活動団体の物品調達屋をしている盗みのプロ。計画の発案者である北川は幸田の同窓で表向きは立派な一般社会人で妻子持ち。大きな身体に広い心と繊細な優しさを持った男盛り。私的にこいつが一番謎です。大変魅力的ですが。北川の弟でまだ10代の春樹。春樹は幸田を押し倒して乳首を弄くりまわすというツワモノです。この兄弟はとにかく幸田という虚無的な男に魅了されている部分が多くある。そして北の工作員で現在は北、南、日本の公安から追われている爆破工作のエキスパート「モモ」。モモの存在が幸田を少しずつ変えていくことになる。あと、銀行内部に詳しい野田と岸口老人(野田もとても魅力的だし、岸口老人に関しては驚きの伏線と結末があり重要人物なのですが)。羽海野さんの同人誌を最初に読んだので、もれなく全員羽海野さんのキャラクターで脳内補完されています。だってピッタリなんだもの。黒髪に切れ長の瞳で静かに微笑むモモなんて、羽海野さんのモモ以外には考えられないし、個性がないようで色気の漂う幸田の細い身体も、北川の気のいいアンちゃん風長髪も素敵すぎる!

高村先生はデビュー作から「男惚れ」の世界を描いていらっしゃったのですね。後半、幸田のモモへの想いが明らかにされるところでは思わず「えっ」と声に出してしまいました(笑)そんなー、匂わせるとかじゃなしにハッキリ仰るなんて素敵すぎるだろう。幸田の抱える厭世的というのでは甘いぐらいの、世間に対する憎悪と無関心がたまらなくツボでした。「人間のいない土地へ行きたい」が口癖の幸田が、ぎりぎりの処で現実に留まって、生きることを諦めているわけではないのも好きでした。
高村先生の、突然過ぎる「死」を過剰な演出なしで登場人物達の胸に納めるやり方にはいつも驚いてしまうのですが、「黄金」はある程度覚悟をしていたので大丈夫でした。それでも「モモ~!」と叫ぶことは止められませんでしたが。ああ、そうなるよね。今まで生きて来られた方が不思議だったのよね。幸田はモモを生かしてあげたかっただろうに・・・。北川と幸田は一体どこに向かうのだろう。北川は幸田が変わったというけれど、結局は二人から始まったことだったんだよね。幸田が「人間のいる土地」でも生きていけるようになったと示唆する結末は、単純なハッピーエンドとは言えないけど二人の行く手を明るく照らすものだと信じたいです。まあ、北川といれば幸田はたぶん大丈夫。
それにしても高村先生・・・私は「幸田総受けだー」と思わずにはいられませんでしたよ(笑)女装したモモが相手でも幸田は押し倒されていると思います。幸せそうに笑うモモと、モモに見惚れる幸田が目に浮かびますよ。「モモさん」「幸田さん」と呼び合うのがツボでした。ああ、好きだー。
兎にも角にも大満足の一冊でした!


関東甲信越以南に縁のない人生なので、物語られる土地(特に南)への羨望は尽きません。
『黄金を抱いて翔べ』の舞台は大阪です。
逃亡者は統計的に南に向かうというけれど、私はきっと大阪には行かない(何の話だ)。どこに居る自分を想像しても、大阪に居る自分というのはどうも違和感がある。そのくらい、大阪という地は私にとって魔的な存在です。身近に人にとってはだから何だという話ですが。

今度こそ一般書は読み納めかな?作中と季節的にシンクロしていたのがちょっと嬉しかったです。

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もも~!

もも~!もも~!もも~!
あの(羽海野さんの)「もも」の穏やかな笑顔に騙されて、こんな結末になるなんて想像してませんでした。幸田とももの幸せな未来を疑ってなかった~。そんなはずないですよね、高村薫だもの(シクシクシクシク)
今日読み終えたので、やっとyoriさんのレビュー読ませていただきましたが、もう放心状態です。しばらく立ち直れません。
ももが、ももが……。
それにしても幸田総受けですか?ももにまでやられちゃうんですか。まあ、それもありか……。

ああっ!

気が付きませんでしたか?!羽海野さんの本で、寿司と牛乳の横に「最後の晩餐」ってあったの。それを読み覚悟をしつつ読んだため、そこまでダメージは受けなかったのです。でも、もしかしたら無事かもという期待もあったので読んだあとは放心状態でした。寿司屋で泣きそうになるぐらいにはショックでしたよ。
モモ、死なないで欲しかった。幸田さんと共に生きて欲しかったよ~。
それでも「黄金」は自分でも驚くぐらい好きです。登場人物の魅力も話の疾走感も。ただ、高村先生という方がますますよくわからなくなりました。だって、モモと幸田が恋人になる意味が謎ですもの(腐女子にあるまじき発言?)。この話を男はどのように受け取るのだろうか・・・。
幸田さんは、脳内で二転三転した結果「攻め」に落ち着きました。京美人のモモに花を持たせようということで。

実は……。

羽海野さんのは、絵だけながめて我慢してました。ふたりで寿司と牛乳分けあって何してるんだろうと。あれはそういう意味だったんですね。それでyoriさんは旦那さまと行ったお寿司屋さんでショックを受けていたわけですね。寿司と牛乳という陳腐な組み合わせの食事がラストディナーだなんて!
それにしても羽海野さん、軽く明るく描いちゃってくれてますよね。ふたり楽しく食事中だと思ってましたもの。ある意味そうですけど。最後に幸せな想いの中で逝けて、ももは幸せだったんでしょうね。
もも~!
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