スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

「黄金を抱いて翔べ」

ougon.jpg
銀行本店の地下深く眠る6トンの金塊を奪取せよ。大阪の街でしたたかに生きる6人の男たちが企んだ、大胆不敵な金塊強奪計画。ハイテクを駆使した鉄壁の防御システムは、果して突破可能か?変電所が炎に包まれ、制御室は爆破され、世紀の奪取作戦の火蓋が切って落とされた。圧倒的な迫力と正確無比なディテイルで絶賛を浴びた著者のデビュー作。日本推理サスペンス大賞受賞。

高村薫先生のデビュー作です。
最初に一言、ものすっごく面白かった。
ネタばれあります。

同人誌きっかけというのが恥ずかしいですが、羽海野さんの「青いカラス」に少しだけ入っていた「黄金」が気になり、早速読んでみました。そしたら・・・これ、すごく好きです。「合田3部作」や「李歐」に比べてあまり知名度がない気がするのですが(そんなことはないのかな?)、ストーリーも登場人物の魅力も引けを取らないと思います。主人公であり当事者の幸田の視点でほぼ全編が語られるため読みやすかったです。同人誌を読む前は、老獪な男達(50代)のピカレスクロマンなのかなーと思っていたのですが、主人公達は29歳でした。それにしても、幸田にせよ北川、野田にせよ「何故」という動機の部分が語られないのが最初は不可思議でした。動機付けをしたくなるのは、エンターテイメントというには硬質すぎる高村先生の文章に惑わされるせいかもしれません。でも「黄金」は何というか、しなやかに筋の通った一級の犯罪小説なんですよね。そこにはバックグラウンドなんて味付け程度で十分なんでした。
金塊を盗む。ただそこにあるから盗む。そうやって生きてきたから盗む。
個々の事情も社会的主張もすっ飛ばして「盗む」。
その痛快さに眩暈のような高揚感を覚えました。

6人のメンバー紹介を。主人公の幸田は学生時代からアングラ系の活動団体の物品調達屋をしている盗みのプロ。計画の発案者である北川は幸田の同窓で表向きは立派な一般社会人で妻子持ち。大きな身体に広い心と繊細な優しさを持った男盛り。私的にこいつが一番謎です。大変魅力的ですが。北川の弟でまだ10代の春樹。春樹は幸田を押し倒して乳首を弄くりまわすというツワモノです。この兄弟はとにかく幸田という虚無的な男に魅了されている部分が多くある。そして北の工作員で現在は北、南、日本の公安から追われている爆破工作のエキスパート「モモ」。モモの存在が幸田を少しずつ変えていくことになる。あと、銀行内部に詳しい野田と岸口老人(野田もとても魅力的だし、岸口老人に関しては驚きの伏線と結末があり重要人物なのですが)。羽海野さんの同人誌を最初に読んだので、もれなく全員羽海野さんのキャラクターで脳内補完されています。だってピッタリなんだもの。黒髪に切れ長の瞳で静かに微笑むモモなんて、羽海野さんのモモ以外には考えられないし、個性がないようで色気の漂う幸田の細い身体も、北川の気のいいアンちゃん風長髪も素敵すぎる!

高村先生はデビュー作から「男惚れ」の世界を描いていらっしゃったのですね。後半、幸田のモモへの想いが明らかにされるところでは思わず「えっ」と声に出してしまいました(笑)そんなー、匂わせるとかじゃなしにハッキリ仰るなんて素敵すぎるだろう。幸田の抱える厭世的というのでは甘いぐらいの、世間に対する憎悪と無関心がたまらなくツボでした。「人間のいない土地へ行きたい」が口癖の幸田が、ぎりぎりの処で現実に留まって、生きることを諦めているわけではないのも好きでした。
高村先生の、突然過ぎる「死」を過剰な演出なしで登場人物達の胸に納めるやり方にはいつも驚いてしまうのですが、「黄金」はある程度覚悟をしていたので大丈夫でした。それでも「モモ~!」と叫ぶことは止められませんでしたが。ああ、そうなるよね。今まで生きて来られた方が不思議だったのよね。幸田はモモを生かしてあげたかっただろうに・・・。北川と幸田は一体どこに向かうのだろう。北川は幸田が変わったというけれど、結局は二人から始まったことだったんだよね。幸田が「人間のいる土地」でも生きていけるようになったと示唆する結末は、単純なハッピーエンドとは言えないけど二人の行く手を明るく照らすものだと信じたいです。まあ、北川といれば幸田はたぶん大丈夫。
それにしても高村先生・・・私は「幸田総受けだー」と思わずにはいられませんでしたよ(笑)女装したモモが相手でも幸田は押し倒されていると思います。幸せそうに笑うモモと、モモに見惚れる幸田が目に浮かびますよ。「モモさん」「幸田さん」と呼び合うのがツボでした。ああ、好きだー。
兎にも角にも大満足の一冊でした!


関東甲信越以南に縁のない人生なので、物語られる土地(特に南)への羨望は尽きません。
『黄金を抱いて翔べ』の舞台は大阪です。
逃亡者は統計的に南に向かうというけれど、私はきっと大阪には行かない(何の話だ)。どこに居る自分を想像しても、大阪に居る自分というのはどうも違和感がある。そのくらい、大阪という地は私にとって魔的な存在です。身近に人にとってはだから何だという話ですが。

今度こそ一般書は読み納めかな?作中と季節的にシンクロしていたのがちょっと嬉しかったです。

「第七係」読了

ああ、「マークス」の合田と森がよみがえります・・・。
雄一郎はこの「七係」の雄っぷりからは「LJ」のバイオリンを嗜む姿などまったく想像出来ません(笑)
口は悪いし素行も悪いし、結構無茶苦茶な捜査だし・・・素敵じゃないか。
不安定一歩手前の、情熱に溢れるわけでも正義感を全面に押し出すわけでもないクールな印象を受けました。一番「警察小説」らしいのではないでしょうか。

「マークス」を読んだ時には七係の面々の個性が今一つ消化不良な感じがしたんですよね(ペコさんは別格)。でもこの「七係」で各々の性格やら私生活やら刑事としての矜持やらが垣間見えてとても良かった!それにしても森には突っ込みどころが満載でしたが。自己啓発CDって!―読んでて吹き出しましたよ。そして本当に「三枚目」なんですね。最後の合田の言葉にまた笑ってしまいました。深刻な場面だけど「頭に包帯巻いた三枚目」って!もっと他に言い方なかったの!?雄一郎!
何だかんだで合田の相方を務められるのは森なんだなぁと再確認し、かなり幸せな気持ちになりました。
私の中の森は神経質な紅顔の美青年風であることは内緒です(笑)

最終話の「凶弾」の舞台になった東池袋は学生の頃よく訪れました。友人があの辺りに下宿していたんです。池袋にどうしてこんな下町が?と思う様な不思議な一帯でした。小さな部屋の窓から銭湯の煙突と、反対側を見ればサンシャインの巨大な影と―。合田の感じた混沌は確かにあの辺りに存在するのかもしれません。


またいつか、合田に会える日がくるといいな。


合田再び

今日は高村薫『警視庁捜査一課第三強行犯捜査第七係』(長い!)が掲載されていた「小説現代 1993/4・6・8・10・12月号」をコピーしに図書館まで行ってきました。最初は国会図書館まで足を運ぶつもりだったのですが(一度行ってみたかったのです)、調べてみたら近隣の行ったことある図書館に保管されていることが判明したので、迷わず近いほうを選びました。ただ古いだけの図書館だと思っていたら、我が県屈指の資料館でもあることを知りました。小説を読む、借りるだけが図書館ではないのですね・・・司書資格を持っている人間の発言とは思えないな(笑)
ちなみに私は今でも心の片隅に図書館司書への憧れがあり、レファレンスに若いお姉さんが座っていようものなら羨ましくて仕方がなくなります。実際は絶対に本屋の方が性に合っていると思いますけどね。
そんなこんなでせっせと自分でコピること76枚!係りの人がやるもんだとばかり思っていたので正直驚きました。素人が扱ってよろしいのですか。「小説現代」は、おそらく何人もの先人がいらっしゃるのでしょう。高村薫のページだけが異様に開きやすくなっていて感慨深かったです。
ちゃんとページの抜けがないかもチェックして無事に終了。760円で済めば安いものです。

読むのが楽しみだわ!

「照柿」

ホステス殺害事件を追う合田雄一郎は、電車飛び込み事故に遭遇、轢死した女とホームで掴み合っていた男の妻・佐野美保子に一目惚れする。だが美保子は、幼なじみの野田達夫と逢引きを続ける関係だった。葡萄のような女の瞳は、合田を嫉妬に狂わせ、野田を猜疑に悩ませる。『マークスの山』に続く合田刑事第二幕。現代の「罪と罰」を全面改稿。

ただただ、全編通しての「熱」に脳内を侵された心持です。暑すぎた夏、という気が狂う一歩前(いや、合田に至っては半分狂っていましたし)の季節と、野田の働く工場の過酷な労働環境の描写に。
高村薫の子細に渡った描写力って凄まじいです。人物の感情については相変わらず硬いというか、最低限の説明しかしないのに、それを補って余りある状況描写。合田3部作を読み終わったら他の作品も読んでみたいと思いました。
「罪と罰」と帯にはありましたが、どちらかというと「カラマーゾフ」の方が相応しい気が・・・。父と息子という不変のテーマを盛り込んで結局父親の影から逃れることの出来なかった男の悲劇を描いたドラマだと思ったので。美保子という女は、男たちを正気と狂気の分水嶺に小指一本で突き落とす役割だったと思うのですよ。

合田、お前は一体いつからそんな不安定な人間に・・・。『マークス』では懊悩が深いだけの雄刑事だと思っていたのですが、病んでいたのですね。
お前は森に心配かけ過ぎなんだよ。そんなだから森は黙って島に行く決意をしたんじゃないか・・・。
やっぱり合田と森の関係が好きでした。だからもう少し最後に会話でも手紙でもいいから欲しかったです。加納の気持ちに合田が気づいていないとは思えないのですが、そういった面では繊細なのに鈍感で厄介な男だと思いました。合田、受けでも全然ありですよ(笑)泣かせてみたくなりました。

「キスだけでも―」と言った合田がツボでした。
女へのダイレクトな欲情。男って滑稽で美しいですね。

さて、『レディー・ジョーカー』いきますか!

「マークスの山」

何でこんなに読むのに時間がかかったのか!
それはイチにニにも字がギッシリだから(笑)

高村先生の文章は鋼鉄のような印象を受けました。
冷たさと灼熱が混在している硬い鋼鉄。うん、好きですね。
直木賞受賞作ですが、これが大衆文芸ですかと言いたくなるような重量感のある話でした。

昭和51年南アルプスで播かれた犯罪の種は16年後、東京で連続殺人として開花した―精神に〈暗い山〉を抱える殺人者マークスが跳ぶ。元組員、高級官僚、そしてまた…。謎の凶器で惨殺される被害者。バラバラの被害者を結ぶ糸は?マークスが握る秘密とは?捜査妨害の圧力に抗しながら、冷血の殺人者を追いつめる警視庁捜査第一課七係合田刑事らの活躍を圧倒的にリアルに描き切る本格的警察小説の誕生。

警察小説であり犯罪小説であり山岳ミステリーでもあり・・・いやいや、面白かったです。
それにしても警察とは本当にこんな組織なのかい!?これがリアルだというのなら私は刑事という生き物がとても気になるぞ。友人が警察官に転職したので、早く昇進してもらって是非とも内情を聞きださなければ!ただ、犯人も動機も本当にそのままいくの?という感じで私としては最後にどんでん返し的な趣向を期待したのですがそんなものはなかった。精神異常者が殺人犯という図式がちょっと嫌だなと思ったのですよ。そして真相が一気に明らかになるのが「遺書」というのもなんだか腑に落ちないなーと。でも元になった殺人事件の真相よりも、「山」の不気味さが重要なんだよね。登山の趣味とは無縁ですし理解も出来ないのですが、これほど死と隣り合わせの「趣味」ってなかなかないよね。
そこに生まれる男たちの結束感たるや、きっと想像を超えるものがあるのでしょう。

この小説は、殺人(犯罪)を犯すことへの警鐘や憐憫が皆無なんですよね。情に訴えようとしていない。何というか、本当に徹底している。そういう部分が好きです。

さて、合田刑事ですよ!合田刑事!
好きです、合田。
読みながら何度「なんだこの面倒くさい男は!」とつぶやいたことか(笑)
この男が面倒な男なんだよ。捜査官の鑑のような刑事なんだけど、とにかく考えることが暗い。些細な事で不快になりすぎる。すぐ悩むくせに基本的に行動と思考回路は雄。肝心な私生活での感情の機微からは逃げっぱなし。典型的なワーカーホリックの33歳ですよ。そして異様に「警察とは」という全体構造への懊悩が深いのです。面倒くさいというか、生き辛そうな男だよ合田は。
180超えのノーネクタイ白スニーカーの短髪男が都内を全力疾走している姿を想像して悶えました。合田、走る走る。家に帰ってスニーカーをきちんと洗うところが可愛いというかなんというか。
そんな合田の相方として有名なのが、検察官で友人であり元義兄でもある加納ですね。妹と離縁した後も何故か合田の世話をかいがいしく焼く34歳。「貴兄」「小生」いう呼び名で交わされる手紙の数々。こんな33歳いないと思う・・・。この二人の過去や感情の吐露があまりないので、読者としてはとにかく妄想してしまうのよね。合田は絶対にバイセクだと思うし、加納はきっとゲイでしょう。離縁した妹の貴代子はそんあ二人の秘かな感情に気がついていたのでは・・・。合田は二人と交際するうちに、自分が本当はどちらの手を取りたいのか気づきつつも偽ってしまったのではないのかな、とか。

ここまで書いておいてなんですが、私は合田×加納ではありませんでした!正直に言うと、加納の存在する意味が物語内であまり説得力がなかった・・・。そこは3部作すべて読んだらまた違うのでしょう。

では、私が誰に萌えたのかってそれは森ですよ!森!「蘭丸」なんて綽名される合田のパートナー。アトピー持ちの30歳。この森が可愛いくて可愛くて・・・お前絶対合田のこと好きだろ~っていう読みしか出来なかったのですが間違っているのでしょうか?誰よりも強靭な精神で淡々と職務をこなす新人類として描かれていますが、山のおかげでアトピーが緩和されたことを喜んだり、合田の傍に常にいたり(仕事だから)と、私にはツンデレにしか見えません!その融通の利かなさが合田を苛立たせているし、森からすれば、合田のムラッ気と有能な捜査官の振り幅に苛立っているしでちっともラブな要素はないのですが、それでもなんか匂いました。
脳内では異動か海外派遣になった森が「最後に抱いてください。主任に女のように扱われたい」と半泣きで懇願するというシーンが・・・すみません、腐っていて。
合田ってバリバリ攻めだと思うのですが、内面は受けというか、押し倒されるのが似合う気がします。
他にも魅力的な人物がいっぱいでした。「ペコ」「又三郎」「十姉妹」「雪乃丞」「モヤシ」―あの、こんな綽名が蔓延する職場は単純にイヤなんですけど(笑)

さて、『照柿』読むぞー。

追記:映画のキャスト、合田が中井貴一ってどーなのよ
プロフィール

yori

Author:yori
気がつけばいつもそばにBL

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
カレンダー
10 | 2017/11 | 12
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 - -
天気予報

-天気予報コム- -FC2-
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。